SAP S/4HANAとは?
基礎知識とメリット、
導入時の注意点までを解説

SAP社が提供するERPソリューション「SAP S/4HANA」。2027年にサポート終了するSAP ERPの移行先として、またDXやデータ活用を支える基盤として注目を集めています。SAP S/4HANAの基本やメリット、導入の注意点などを解説します。

SAP S/4HANAとは?

「SAP S/4HANA」は、ドイツSAP社が提供するERPソリューションで「SAP ERP」の後継となる第4世代にあたり、プラットフォームにインメモリデータベース「SAP HANA」を採用しています。インメモリデータベースは、一般的なデータベースがハードディスクなどの補助記憶装置にデータを保持するのに対し、メモリ(主記憶装置)にすべてのデータを保持することで、高速処理を実現するものです。これによりSAP S/4HANAでも、従来と比較して高速にデータを扱えるようになりました。
SAP ERPのサポート終了を見据えた移行先としてはもちろん、「使い込んできた既存システムがビジネスの変化に追いつけない」などの事情から、データ活用・DX推進を加速させるためにSAP S/4HANAを検討する企業が増えています。

SAP S/4HANAの特徴

SAP ERPから大きな進化を遂げたSAP S/4HANAですが、大きな特徴としては、下記の3点が挙げられます。
  1. 高速処理
まずなによりも、インメモリデータベース「SAP HANA」を採用したことによる高速処理があります。これにより各種処理やデータを分析・表示する時間を大幅に短縮しました。
  1. 使いやすいUI・UX
SAP S/4HANAでは、アプリケーションを作成する設計システムとして新たに「SAP Fiori」が搭載されています。SAP Fioriはスマートフォンやタブレットにも対応し、使いやすい画面を設計することが可能。直感的に利用できる優れたUXを実現します。
  1. 統合されたモジュール
経理・財務、調達・購買、セールス、サービス、設備資産管理など様々なモジュールから構成されるSAP S/4HANAですが、これらのモジュールは完全に統合されています。そのため、モジュールを横断した情報も瞬時に可視化でき、必要な情報をすぐに確認できるように。また、ビジネスの状況・進化にあわせて柔軟に拡張することも可能です。

SAP S/4HANAのメリット

次に、SAP S/4HANA導入により得られるメリットを見ていきましょう。
  1. 業務効率向上
高速処理が可能になることで、スピーディに作業を進められるように。使いやすい画面で作業がしやすくなり、業務効率向上につながります。
  1. スピーディな意思決定
様々な観点から情報を可視化できるため、必要な情報に素早くアクセス。スピーディな意思決定をサポートします。
  1. データ活用・DX推進
データベースや各種モジュールなど、SAP S/4HANAは柔軟なデータ活用を実現しやすい構成となっています。異なるモジュールのデータを組み合わせて分析する、業務に必要な情報をピックアップして可視化する、といったことが容易になり、DX推進にもつながります。
  1. ガバナンス・セキュリティ強化
SAP S/4HANAではガバナンス・セキュリティ強化にも有効です。様々なデータをSAP S/4HANAで一元管理したうえで、アクセス権限を適切に設定し、社内のデータの動きを管理することで、内部統制を徹底。機密情報を保護します。
SAP ERPは自社業務にシステムを合わせるためにアドオン開発をおこなうイメージが強くありましたが、上記のメリットを最大限享受するためにも、「Fit to Standard」という標準機能をそのまま利用するスタイルが推奨されています。業務を標準機能にあわせることで、最新の機械学習機能などをすぐに利用できるほか、「アドオン機能は特定の人しかわからない」「自社ルールに精通した人しか使えない」といった事態を回避し、属人化の解消にもつながります。
一方、標準機能を利用する場合、現行業務と乖離してしまうケースもあり、導入時には現場部門にどうやって“業務を変える”ことを理解してもらうかが課題となります。ですが、最初から「現行業務にあわせてアドオン開発する」と考えるのではなく、まず「業務を変えることは可能か」から検討し、その上でどうしても業務上コアな領域で必要不可欠な機能について「運用で回避できないか」を考え、最後にアドオン開発を検討する、といった流れがお勧めです。

2025年/2027年問題とは?

「SAP ERP」ではアドオン開発をおこなった企業も多く、システムが肥大化・複雑化し、近年求められるリアルタイムかつ柔軟なデータ活用は難しい状況に陥っていました。また、「SAP ERP」は2025年でのサポート終了が発表され、その後、利用者の状況を踏まえて2027年に延長されていますが、このサポート終了にどう対応するかは大きな問題であり、「2025年問題」または「2027年問題」と呼ばれています。ここでは、SAP S/4HANAに移行するのか、ほかのパッケージに移行するのかなどの対処を検討しなければならず、さらにSAP S/4HANAに移行する場合は、アドオン開発した機能をどこまで持っていくかも判断が必要です。SAP S/4HANAでは「テクニカルコンバージョンアプローチ」という手法で、SAP ERP(ECC6.0)でアドオン開発した機能をSAP S/4HANAに展開するための標準ツールが用意されており、機械的に既存のSAP ERPを移行できます。比較的短期間で新たな基盤へ移行できることがメリットですが、あくまで“延命した”だけの結果となり、最新機能の恩恵にあずかれない点には留意すべきでしょう。
AI・機械学習などの最新機能や、「SAP Fiori」ベースの使いやすい画面などSAP S/4HANAのメリットを最大限活かすならば、不要なアドオンを廃止して標準機能にあわせるなどのアプローチが欠かせません。すぐにすべてのアドオンを廃止できなくても、段階的にアドオンを減らすなど、SAP S/4HANAをどう活用するか、将来的なロードマップを描いたうえで移行を進めることをお勧めします。

SAP S/4HANA Cloudとは

SAP社では、SAP S/4HANAのクラウドサービス「SAP S/4HANA Cloud」として、SAP S/4HANAと同等の機能を利用でき、自由にアドオン開発もできる「Private Edition」と、アドオン開発ができないなどいくつか制約のある「Public Edition」を提供しています。 SAP S/4HANA Cloudのメリットはなんと言っても自社でサーバ資産を持つ必要がないことが挙げられます。インフラを含め、アプリケーションが起動するまでをSAP社が担保し、運用から解放される点は魅力です。特に、SAPではインフラ・ミドルウェアを管理するBASIS技術者が必要となりますが、BASIS技術者は人材が不足しており、長期にわたって確保するとなると人件費高騰も懸念です。OSやデータベースの管理・老朽化/EOL対応、人材問題などをまとめて解消できるSAP S/4HANA Cloudは有力な選択肢と言えるでしょう。
業務が比較的シンプルで標準機能に合わせやすい場合はPublic Edition、将来を見据えて業務改革をしながら徐々に標準機能に寄せていくアプローチをとるならばPrivate Editionなど企業ごとの事情にあわせて選べますが、どちらにしても標準機能を熟知し、シナリオにあわせてリードできるベンダーと二人三脚で進めることが重要です。

丸紅ITソリューションズが
SAP S/4HANA・SAP S/4HANA Cloud導入をサポート

丸紅ITソリューションズ(以下、MISOL)は、企業のSAP S/4HANA・SAP S/4HANA Cloud導入を支援します。オンプレミス・クラウド両者の実績があるほか、「Fit to Standard」「テクニカルコンバージョンアプローチ」のいずれも手がけてきました。特に商社・卸売業、貿易業務へのナレッジは豊富で、業務整理からおこない、スムーズかつ確実な導入をサポートします。また、丸紅グループの海外拠点へのシステム展開・保守を担うことからグローバル対応も強みとしており、現地ローカルスタッフと連携し、要件定義から対応。各国の税制対応はもちろん、現地言語でのコミュニケーションや成果物提出、リリース後も現地時間・英語ベースでのサポートが可能です。 現行システムの状況や、業務と標準機能のギャップ、目指したい将来像などにより、SAP S/4HANA・SAP S/4HANA Cloud導入の最適解は企業ごとに大きく異なります。クラウドにすべきなのか、現行業務をどう変えなければならないのか、アドオン開発はどう進めるのかなど、企業ごとの事情にあわせた最適なアプローチを提案します。

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